「農業におけるITシステム導入事業の構想(4回目発表)」(発表者:室伏)

基本情報

  1. 日時:2012 年 1 月 28 日 10:00〜12:00
  2. 出席者:柴口(見学)、種市、室伏(計 3 名)(敬称略)
  3. テーマ「農業におけるITシステム導入事業の構想(4回目発表)」 発表者:室伏

背景

大学3,4年次に友人とルームシェアをしていたが、元ルームメイトの実感が農家であり、一度宿泊させてもらったことがある。その際に、個人農家の収益が低く、それによって子供達が大学進学以外の選択肢を選ばざるを得ない、という旨の話を聞いた。決して楽ではない仕事をこなしていながら、収益は低いという現状を目の当たりにした。農家の経営の厳しさを肌感覚で感じた経験となった。この経験が、日本の農業に問題意識を持つきっかけとなった。こうして、農業に関わる人がもっと幸せになるように、日本の農業の状況を改善するための事業を考えてきた。つまり、農業にICTを用いて問題解決を試みる事業である。今回は第4回目発表であり最後の発表となるので、集大成として、前回までのまとめおよび顧客獲得にむけた活動について発表し、議論において本事業が成功するストーリーを考えてもらった。

今回の発表における目的

農業におけるITシステム構築事業の全体像を共有し、事業が成功しているイメージを皆に描いてもらうことで事業成功に必要なアクションは何かを見極めること。

内容

1、前回までの内容
日本の農業のあるべき「カタチ」とは?
・生産量が国内外の需要を過不足なく満たしている。
・従事者の労働的負担が大きすぎず、労働量に見合った収益が得られる。
・成果物の質が高く安全である。
・仕事が社会的に評価されており、職業として一定の人気があり後継者がいる。
・アクシデント(災害、風評被害、冷害etc)への対応が整っている。
日本の農業において、これを実現する上で考える必要があるテーマとは?
・需要情報や消費者の声などの有益情報の入手
・新規就農者の獲得
マーケティング力の強化
・その他
自分達(新規に立ち上げたベンチャー企業)が問題解決に向けて取り組むべきことは?(「効果×実行性×先見性」の軸で判断)
・有益情報の入手支援
A.国内の農家&市場を持つ海外の農家の生産情報入手および情報分配
B.国内&海外市場における需要情報の入手および情報分配
C.消費者からのフィードバック経路の整備支援
・新規就農者獲得支援
D.就農に対する不安を取り除くこと
マーケティング力の強化支援
E.成果物のブランド構築支援
F.インターネットを用いた宣伝、広告

システム案

  • ソフトウェア

・ブランド構築戦略の立案(IT不使用。直接会って話し合う)to E
・マニュアル、オーダーメイド作製の標準化資料したソフトの作製&提供 to D
・HP(成果物が販売でき、消費者からの声が書かれる掲示板)の作製&提供 to C,D,E,F

  • ネットワーク

・フレームが既に書かれている情報共有ファイル。我々と顧客である農業従事者が情報共有できる(生産予定・状況、求人情報が打ち込めるようにする) to A.B

  • その他(システム外)

・生産予定立案の時はFace to Faceの話し合いをベースにして行う。 to all

顧客のターゲットセグメント
ターゲットセグメントを決定する上での切り口として「営業利益の規模」および「経営スタイル(法人or個人農家)」を選択した。それぞれの理由は、「目標とする収益(ブログでは割愛。詳しくはVEX laboの資料を拝見ください)を得るには営業利益が1千万円以上の顧客が望ましいため」と「法人の方が合理的な判断を短時間でするため、事業の回転率を考えると法人の方が望ましいため」である。
よって、対象顧客は、優先順に「営業利益1千万以上×法人経営、営業利益1千万未満×法人経営、営業利益1千万以上×個人経営、営業利益1千万未満×個人経営」とした。

2、販路獲得

  • PUSH型

・直接訪問
・ダイレクトメールの送付
・顧客が持つHPからお問い合わせ

  • PULL型

・自社HPからお問い合わせ待ち

  • 契約獲得方法

E-mailや電話で顧客と連絡を取りあった後、顧客企業にまず足を運び、無料で経営上のお悩み相談を受ける。そこで信頼関係を築けるよう努力し、契約締結に持っていく。始めは低料金の契約から始めていくイメージ。

3、広告・宣伝方法
PUSH(能動的)型アクション
ターゲットセグメントの顧客を直接訪問する
ターゲットセグメントの顧客にダイレクトメールを送付する
PULL(受動的)型アクション
・自社HPを構築し、お問い合わせに応答する態勢をつくっておく
・成功体験を慎重かつ確実に積み、口コミによる浸透を期待する

4、議論
「全脳思考(神田昌典氏の提案するフレームワーク)を用いて、事業開始から目標収益達成までのストーリーを立てよ」
という議論テーマに対し、出たアイデアとして一例を挙げる。
・まず、我々のHP上に無料経営相談をお願いするお問い合わせがきた。問い合わせてきた農業法人に対して、出向いていき無料で経営相談に乗る。顧客は、「農作物を全てJAに売っており、収益が正直少ないのでもっと増やしたい。どうにかならないか?」と言っている。流通で発生する中間マージンが買い取り価格を下げていると考えた我々は、自社HPおよび直販店で販売することを提案し、その際に得られる収益予測を提示した。顧客はよく考えた結果契約を締結することにした。そこで、HP構築および直販店の場所、店舗陳列、宣伝方法をアドバイスし、新たな形式の販売をスタートさせた。また、顧客は長らく根菜類を生産を得意としていたが、今年の根菜類の需要情報を共有し、最適量の生産を促した。消費者の声もHPからもらい、改善すべきポイントに「見た目はきれいだが、もっと甘い方が美味しい」ことが分かったので、肥料を変更し甘味の強い根菜類の育成に取り組んだ。結果、顧客法人の根菜類はブランド化し、中間マージンが発生しないため高付加価値・高収益を実現させ、顧客社員は仕事にやりがいや満足感を持つようになった。

まとめ

事業の全体像がくっきりとしてきて、ベンチャー立ち上げから事業開始、目標収益達成までのストーリーが描けるようになった。
今後、もし本当に起業することになった際は、本年を通してやってきたように段階を踏んで、様々な人の意見を反映させることによって事業計画を立案していくつもりである。

文責(室伏)