日本版LLP・LLCを学ぼう

20060528


発表:株式会社デュナミスNEDOフェロー永井大介


1.はじめに
2005年8月1日。2006年に施行される新会社法を受けて新しい会社形式、
有限責任事業組合(LLP)と合同会社(LLC)が設立された。

LLP・LLCの設立背景を読み解くと共に、今回の発表ではそれら新会社の形式を知りこれまでの株式会社、合名会社等とはどう異なるのか、またどのような事業体にメリットがあるのかを学んだ。



2.発表内容
LLP・LLCの大きな特徴は3つある。
(1)自由度の高い組織形態
(2)有限責任
(3)パススルー課税(LLPのみ)

LLP・LLCには株式会社等に存在する取締役会、監査役会等の内部組織を必要としない(作ることも可能)。
そのため組合員(LLP)、社員(LLC)は雑務に終われることなく個々人がやらなければいけないことに時間を割くことが可能となる。

また利益配分は出資分に比例させる必要はないので、その人の貢献度に応じて利益配分することができる。
それによりこれまで報われることが少なかったと感じられる技術提供者、資格保持者などの高度の知識保持者の参加可能性、モチベーションを高めることにつながる。

さらにLLP・LLCではこれまでの合名会社、合資会社には認められなかった有限責任が認められる。
これにより出資金が得やすくなり、他の協力も大きく期待できるようになった。



またLLPのみの制度とはなるがパススルー課税という課税制度が適用された。
この制度では従来の株式会社にあった二重課税制度をさけ、事業者に対して税金の上で優遇する措置である。
そして事業としてマイナスを計上した際には、そのマイナスを自分の所得と合算させることで所得税
法人税の軽減も見込める制度である。
そのため、大企業内にある成長見込み可能性が低く、マイナスを出す可能性があるといったリスクをはらんだ事業分野において今後用いられることが多くなることが予想される。





3.議論の内容
・今後の産学連携の大きな推進力となるか。
これまで産学連携に乗り気ではなかった研究者が産学連携しやすい状況となったので、
今後はLLP・LLCを用いた産学連携が増えるのではないか。

・LLP・LLCが設立された背景は。
1990年代にバブル崩壊後、経済不況、大企業倒産、デフレなどを経験し、その後の21世紀に入った日本では、
作れば作るだけ売れるという状況ではもはやなく、ものはあまり消費者は本当に好きなもの欲しいものしか手に取らない
という状況になっている。作っても作っても売れる保証がない状況では、規模の利益を追求しても利益はでない。
このような時代に利益を出すには、他社との差別化が必要となり、その差別化は個人や個性に依存するものであると考える。
そしてそれを示すかのように現代社会では物そのもの自体の価値よりも、
情報・ブランド・アイディア・ノウハウといった無形資産に価値を見出す傾向がある。
よって今後望まれる会社の事業形態は人の専門性・能力・興味・活動を最大限に生かすことができるような組織形態ではないかと考えられる。



4.まとめ
有限責任事業組合(LLP)・合同会社(LLC)はこれまでの事業体にはない特徴を持っている。
その特徴は(1)自由度の高い組織形態、(2)有限責任、(3)パススルー課税(LLP)の3つである。
これらの特徴は現代社会が必要としている、無形資産(ブランド・アイディア等)の産出に都合がよく、
個人の能力を最大限に活かせる。また技術をベースとしたベンチャー企業においても、組織の自由化、有限責任という点で
多くの企業がこの会社形式を用いることになると思われる。